2019/01/28
定番の「きゅうりダイエット」が話題になった理由は?
「世界一栄養のない野菜」としてギネスにも認定されているきゅうりですが、昔から定番のダイエット食材として親しまれてきました。最近では、きゅうりに含まれていて、脂肪分解に関わるホスホリパーゼという酵素が、テレビで取り上げられて話題になっています。
より「きゅうり熱」が高まりそうなこの夏、改めてきゅうりのダイエット効果を分析します。
きゅうりに含まれる成分と働き
きゅうりの栄養
■たっぷりの「水分」に注目!
きゅうり1本(100g)あたりに含まれる水分は95.4gとなっており、ほとんどが水分であることがわかります。「水ばかりなのに食べる意味はあるの?」と思ってしまいそうですが、これは決して悪いことではありません。特に夏場はこまめな水分補給が大切で、飲みものだけでは体の中の水分が不足しがちになります。暑い気温の中で味噌汁やお吸い物などの汁物を飲むというのもなかなか難しいので、夏場は固形の食事からもしっかりと水分を摂ってあげることが理想的です。
■ビタミンK
ビタミンKは、きゅうりに含まれている必須栄養素の中では一番割合が多く、きゅうり1本から成人の1日の摂取目安量の23%の量を摂ることができます。ビタミンKの働きは主に血液を凝固させる、骨を強くするといったものです。健康のためには必要な成分ですが、直接ダイエットに効果のある栄養素とはいえません。
■ビタミンC
ビタミンCは、きゅうり1本から成人の1日の摂取推奨量の14%を摂ることができます。ビタミンCはコラーゲンの合成、メラニン色素を抑える、免疫力を高めるといった働きがあり、美容と健康どちらにも役立ちます。
きゅうりには、この他にも、貧血を防ぐ銅、むくみを改善するカリウム、妊娠時に需要が高まる葉酸が含まれています。しかし、きゅうり1本に含まれている量はどれも、1日に必要な量に対して10%以下であり、多いとはいえません。
きゅうりダイエットにも良い「機能性成分」に注目
きゅうりのほとんどが水分でギネス級に栄養が少ない、ということをお伝えしましたが、これはあくまで人が生きていくために必要な必須栄養素における話です。
食品には、必須栄養素の他に「機能性成分」と呼ばれるものがあり、「生きていくためには必ずしも重要ではないが、摂ると健康に役立つ成分」として位置付けられています。
きゅうりに含まれている機能性成分のピラジンは、きゅうりの青臭さの元になる成分です。ピラジンには血栓を予防して、血液をサラサラにしてくれる効果があります。また、アミノ酸の一種であるシトルリンは、一酸化窒素を作り、血管を拡張させる効果があります。
ダイエット視点で見ると、きゅうりに含まれているピラジンやシトルリンは血流を良くし、代謝を上げる効果が期待できる、といえるでしょう。
「きゅうりを食べて痩せる」シンプルな理由
ダイエット要素満載のきゅうり
きゅうりは低カロリー(14kcal/100g。※1本は約80g)で、よく噛むことができるというだけで十分にダイエットに役立つ食品だと考えられます。咀嚼には多くの効果があり、満腹感を高めるというのもその1つです。
満腹中枢を刺激するための条件は次の2つです。
■胃の中にある程度食べ物が入ること
■唾液を分泌してアミラーゼが糖を分解すること
きゅうりにはわずかな量の炭水化物が含まれているので、きゅうりを咀嚼するだけでもその条件は揃います。
ダイエットの基本は、摂取エネルギーを消費エネルギーよりも低くすること。きゅうりは、低カロリーで脳を満足させるというダイエットの理想を叶えてくれる食べ物です。
流行の兆し!? 最新版きゅうりダイエットを分析
さてここで、テレビで取り上げられた最新版のきゅうりダイエットについて分析していきます。各テレビ番組で、タレントの山田花子さん、まちゃまちゃさん、福田明日香さん、元なでしこジャパン丸山桂里奈さんらが実践したそうです(編集部調べ)。
テレビで拝見する最新版のきゅうりダイエットのやり方は、「食事の前にきゅうりを1本食べておく」というものが多く、そのメカニズムは、「きゅうりに含まれるホスホリパーゼの効果によって脂肪分解が活性化される」というものです。
例えば、単行本『きゅうり食べるだけダイエット』(野崎洋光 著、工藤孝文 監修/KADOKAWA 刊)や、それをもとにした日本テレビ系『得する人損する人』の「きゅうりもぐもぐダイエット」も同様です(編集部調べ)。
これについて調べたところ、確かに、2014年の東京都医学総合研究所の研究では、ホスホリパーゼがリン脂質を分解することが体重の増減に関わっているという発表をしています。
ただし、ホスホリパーゼには30種類以上の型が存在しており、型によって肥満を改善するものもあれば促進するものもあると述べられています。最新版のきゅうりダイエットでは、きゅうりに含まれているホスホリパーゼがどのような型で、どのような作用をするのかを今後さらに究明していく必要がありそうです。
きゅうりダイエットのメリットデメリットは?
他の野菜とバランスよく
とはいえ、前述の通り、難しい栄養成分や脂肪分解のメカニズムはさておいても、きゅうりは低カロリーで、シャキッとした歯ごたえがあり、しっかり噛むことができるという点だけでもダイエットに役立つことは間違いありません。
例えば、空腹感をごまかすために活用するのもいいでしょう。夕方や夜など、「今、おやつなどを食べたら太るかも……」というタイミングできゅうりを利用するのも◎です。
ただし、無理な食事制限は良くないので、「夜ごはんはきゅうりだけ」「3食ともきゅうりだけ」といった極端な方法はおすすめできません。口さみしくてついカロリーの高いものに手を伸ばしそうになったとき、代わりにきゅうりを食べてみましょう。切った状態で冷蔵庫に常備しておくとおやつ感覚で食べられるので便利です。
一方で、注意点も挙げていきます。
■食べ過ぎは体を冷やす
きゅうりを食べ過ぎてしまうと体を冷やし、食事のバランスが崩れてしまうといった心配もあるので、多くても1日1本程度を目安にすると良いでしょう。
■基本的には味付けをしない
せっかくダイエットをしているのであれば、余分なカロリーはできるだけ省きたいところです。マヨネーズやドレッシングのような高カロリーの調味料は避けるか、少なめにしましょう。
きゅうりダイエットの効果が出ないときは食事全体を見直して
一方で「きゅうりを食べていても効果がない」「きゅうりダイエットは痩せない」という人もいらっしゃいます。もし実践してみてそう感じたときは、その他の食事でカロリーを摂り過ぎていないか振り返ってみましょう。
甘いお菓子や油の多い食事ばかりをしていては、いくらきゅうりを食べていても意味がありません。何事においても、基本が大切なのです。
いずれにしてもダイエットのためにはバランスの良い食事を意識しつつ、いろいろな食品から幅広く栄養素を摂ることが大切です。